「専業主婦の年収」と検索した理由は、金額を知りたいからだけではないはずです。「働いていないんだから」と言われたときに、数字で示せるものがほしかったのではないでしょうか。
ネット上に出回る年収1,300万円は、1日24時間すべてを家事に充てた前提で計算されました。内閣府が実際の家事時間だけで推計した専業主婦の年収は、298万9千円です。
本記事では、この金額の根拠と、家事の価値が家族に伝わらない理由をまとめました。
※出典:内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou00.pdf
専業主婦の年収は約299万円|内訳と計算方法
まず、公的な統計にもとづく金額から確認しましょう。内閣府は5年ごとに、家事や育児といった無償労働を金額へ換算した推計を公表しています。
内閣府データが示す専業主婦の年収と月給
内閣府の推計では、専業主婦が1年間に行う家事の価値は298万9千円と算出されています。 家事に使った時間を「働いていれば得られたはずの賃金」に置き換えた金額で、評価の方法を変えると231万2千円まで下がりました。どの賃金で計算するかによって、年間67万7千円の差が出ます。
▼専業主婦1人あたりの家事労働の年間評価額(2021年)

※出典:内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou00.pdf
自分の家庭で計算する4ステップ
内閣府の推計は全国平均のため、家庭ごとの実態とは差が出てきました。自分の家に当てはめた年収を換算するなら、家事の種類ごとの時給と1日の作業時間があれば計算できます。
▼家事の年収を計算する4ステップ
- 炊事や掃除、洗濯や買い物など、担当している家事を種類ごとに書き出す
- 種類ごとに1日の作業時間を測る(1週間の平均をとると精度が上がります)
- 内閣府の時給(炊事1,285円・掃除1,144円・洗濯1,254円・育児1,502円・買い物1,328円)を掛ける
- 1日分の合計に365を掛けて年額を出す
※出典:内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou00.pdf
年収1,300万円説を検証|試算の前提と実測時間
ここまでが公的データにもとづく金額でした。では、よく見かける年収1,300万円という数字は、どのように組み立てられているのでしょうか。
年収1,300万円という試算の前提
ネット上の試算の多くは、時給1,500円に24時間と365日を掛けています。1,314万円という数字は、夜泣きに備えて眠る時間や、子どもを気にかけながら過ごす時間まで労働に含めた結果でした。
一方の内閣府は、実際に手を動かした時間だけを金額に換算しています。2つの金額の差は、どちらが正しいかではなく、「何を労働として数えるか」の違いから生まれています。
▼2つの計算方法の前提の違い

※出典:内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou00.pdf
実測データで見た専業主婦の労働時間
では、実際に手を動かしている時間はどれくらいなのでしょうか。内閣府の推計では、専業主婦が1年間に家事へ使う時間は2,031時間と測定されました。1日あたりにすると、およそ5時間34分です。
ただし、この数字には限界があります。もとになった調査では、同時に2つの行動をした場合、主なもの1つしか記録されません。子どもを見ながら洗濯をする時間は片方しか数えられないため、298万9千円は実感より低く出やすい金額でした。
※出典:内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou00.pdf
※出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要」https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/pdf/gaiyoua.pdf
家事が年収ゼロと扱われる理由|制度と家庭の壁
金額の根拠がわかっても、家庭のなかで家事が評価されるとは限りません。ここでは、統計上の扱いと家庭内での見えにくさという2つの理由に分けて整理します。
GDPに計上されない制度上の仕組み
1つ目は、家事が国の経済統計に含まれていないことです。内閣府は家事や育児を無償労働と位置づけ、GDPを計算する本体の勘定からは切り離しました。金額換算はあくまで参考資料の扱いで、専業主婦の給料が制度として発生する仕組みにはなっていません。
※出典:内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou00.pdf
名もなき家事と分担割合が家族に見えていない
2つ目は、家事の中身が家族に共有されていないことです。国の調査では、ごみの分類や家族の予定調整といった作業を「見えない家事」として5種類に分けて調べました。このうち在庫の把握と献立を考える作業は、約9割を妻が担っています。
手が止まって見える時間ほど頭は動いているのに、その部分は家事として数える仕組みのどこにも入りません。
▼調査で「見えない家事」とされた5種類

※出典:国立社会保障・人口問題研究所「第7回全国家庭動向調査 結果の概要」https://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ7/Kohyo/keteidoukou7_gaiyou_20240308.pdf
家事の価値を伝える3ステップ|示す・書き出す・記録する
では、家事の価値をどうすれば家族に伝えられるのでしょうか。金額を示すところから一歩進んだ、3つの手順を紹介します。
金額ではなく作業量で示すほうが伝わる
金額を伝えても、分担が変わるとは限りません。「いくら払うか」という話は、相手が代わりに引き受けられる形になっていないからです。一方、作業の中身と量なら、どれを引き取るかという判断に直結するのではないでしょうか。
名もなき家事を書き出して共有する
最初にやることは、担当している家事をすべて書き出す作業です。在庫の把握のように手が動いていない家事ほど、家族には見えていません。書き出して見せるだけで量が共有され、話し合いの土台ができました。
▼書き出しから漏れやすい家事の例

日々の実績を記録して見えるようにする
書き出したリストは、一度見せただけでは薄れていきかねません。誰がどれだけこなしたかを日々記録すれば、分担の偏りが数字として積み上がります。話し合いのたびに一から説明し直す手間もかかりません。
記録の手段は、紙のノートでもメモアプリでもかまいません。
家事管理アプリのCAJICOなら、こなした家事がポイントとして加算され、完了した時点で家族へ通知が届きます。

貯まったポイントは、家族が設定したごほうびと交換でき、やった分がねぎらいという形で返ってきます。見えなかった家事を家族と共有する手段の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問|専業主婦の年収と働き方の比較
専業主婦の年収を調べていくと、働き方との比較にも疑問が出てくるのではないでしょうか。ここでは、あわせて聞かれることの多い質問に答えます。
専業主婦の「仕事」はどこまでが範囲ですか?
他人に頼んで代われる活動だけが、家事として数えられています。炊事や掃除、育児や買い物など8種類が対象で、趣味の料理や自分の身支度は含まれません。
※出典:内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou00.pdf
子どもがいる家庭では金額は上がりますか?
子どもがいる家庭では金額が上がります。育児は内閣府の時給設定が1,502円と、家事のなかでも高い水準に置かれました。時間の面でも負担は大きく、仕事に就いていない妻の平日の育児時間は701分と報告されています。
※出典:内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou00.pdf
※出典:国立社会保障・人口問題研究所「第7回全国家庭動向調査 結果の概要」https://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ7/Kohyo/keteidoukou7_gaiyou_20240308.pdf
専業主婦とパート、どちらが得ですか?
パートで働けば収入は増えますが、家事にかけられる時間は減ります。非正規雇用の妻の家事時間は237分と107分短く、その分を誰が引き受けるかまで含めないと判断できません。
※出典:国立社会保障・人口問題研究所「第7回全国家庭動向調査 結果の概要」https://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ7/Kohyo/keteidoukou7_gaiyou_20240308.pdf
まとめ|専業主婦の年収を知った次にやること
専業主婦の年収は何を労働として数えるかで大きく変わり、金額だけでは家事の価値が家族に伝わりにくいものです。
▼この記事の要点
- 公的な推計による専業主婦の家事労働の価値は年間298万9千円
- 1,300万円説は睡眠時間まで労働時間に含めた試算
- 実測の家事時間は年2,031時間で、1日あたり約5時間34分
- 在庫の把握や献立を考える作業は約9割の妻が担当
- 分担を変えるには金額ではなく作業の中身と量を共有する
家事の量を共有する取り組みは、一度きりで終わってしまうと元の状態に戻りかねません。
CAJICOのように、こなした家事をポイントへ換算して家族に通知するアプリを使えば、日々の記録がそのまま分担の実績として積み上がります。毎日繰り返す家事は定期設定に登録しておけるため、記録そのものが負担になりません。見えない家事を家族と共有する第一歩として、試してみてはいかがでしょうか。




